臨床精神病理グループ

メンバー(平成29年度)

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研究内容(平成28年度)

2016年度は三井信幸先生が市立稚内病院から2年間の医長職を終えて大学に戻った。これにより、メンバーは朝倉、賀古、藤井、三井、豊島の5名に増えた。

朝倉は、第112回日本精神神経学会学術総会の「不安障害の予後—再発の問題を含めて—」のシンポジウムで「社交不安症の予後」を発表した。医学書院から刊行された「今日の精神疾患治療指針第2版」で「社交不安症」の章を担当した。論文としては、「A randomized, double-blind, placebo-controlled study of escitalopram in patients with social anxiety disorder in Japan」がCurr Med Res Opin誌に、「Long-term administration of escitalopram in patients with social anxiety disorder in Japan」がNeuropsychiatr Dis Treat誌に、「Efficacy of escitalopram in the treatment of social anxiety disorder: A meta-analysis versus placebo」がEur Neuropsychopharmacol 誌に掲載された。また、「社交不安症とうつ病」が Depression Journalに、「新たな社交不安症(SAD)のサブタイプである「パフォーマンス限局型」の治療」が 週刊日本医事新報に、「総論:SADの現状と治療の意義」が Medicament Newsに掲載された。

賀古は、医学書院から刊行された「今日の精神疾患治療指針第2版」で「適応障害」の章を担当した。また、当科で長年力を入れて整備してきた統合失調症患者に対する包括的な心理社会的療法(多職種チーム医療、急性期クリパス、認知リハ、デイケアパスなど)について昨年度に引き続き全国各地で講演し、大きな反響を得た。認知行動療法に関する取り組みも継続しており、気分障害に対する集団認知行動療法を継続し、うつ病に対するスマートフォンによる認知行動療法の有効性を検証する全国多施設研究(FLATT研究)の北海道地域センター責任者を務め、北海道認知行動療法センターで双極性障害の認知行動療法のワークショップを開催した。また、双極性障害に対する認知リハビリテーションと集団認知行動療法の有効性に関する研究で科学研究費補助金を獲得した。

藤井は、社交不安症をはじめとする認知機能の研究を継続しており、第1回医療心理懇話会で、統合失調症と対人恐怖の表情認知の違いについて「対人恐怖の表情認知~表情弁別課題を用いて」を発表した。保健センターの活動としては、自殺予防の一般向け啓蒙活動であるメンタルヘルスファーストエイドの講習会を学内で数回行っており、今後も継続する予定である。また、北大生のPHQ-9、K-10によるスクリーニングの結果をもとに、第36回日本社会精神医学会シンポジウム「精神疾患の予防—20年の到達点と今後の展望—」において「不安障害の早期介入:現状と今後の展望について」、第9回不安症学会において「大学生を対象としたPHQ-9およびK-10によるスクリーニングの有効性について」を発表した。論文としては、「<特集=社交不安症(SAD)とは何か> SADの薬物療法」がMedicament News誌に、「特集『精神医療における早期介入』『不安症』」が精神医学誌に掲載された。

三井は、2年間の稚内勤務から大学に戻り、大学病院での臨床、研究、教育に取り組む年となった。医療過疎地域における地域医療から一転して、大学病院における摂食障害の入院治療に多くの時間を割く形となり、それに関連して、心身医学誌の海外文献抄録集に「摂食障害と自殺企図に対する家族要因 スウェーデンの住民登録からのエビデンス」が掲載された。また、研修医2名の学会発表を指導し、摂食障害に関連する研究を発表した。また、以前から取り組んでいた大学生を対象とした気質—性格特性とうつ病あるいは自殺関連行動に関する研究を再開しており、論文作成を進めているところである。

大学院生の豊島は、双極性障害患者の主観的認知機能障害などに関する研究をまとめ、無事大学院を卒業し、学位を取得した。双極性障害患者における主観的認知機能障害評価尺度(COBRA)日本語版の信頼性および妥当性を検討し、現在投稿中である。COBRA日本語版は、双極性障害の主観的認知機能障害評価尺度として、信頼性および妥当性の高い尺度であることが示された。また、双極性障害の寛解期においては、COBRA日本語版を用いて評価した主観的認知機能障害が重症であるほど社会機能と関連するQOLが低下していることが示された。さらに、双極性障害寛解期において、主観的認知機能障害が重症であるほど、現在の服薬の効果に関する病識が乏しいことが示された。双極性障害寛解期における主観的認知機能障害は、生物学的側面、心理学的側面、社会的側面など幅広い領域と関連しており、今後さらなる検証が必要であると考えている。学会発表に関しては、International Review of Psychosis & Bipolarityにおいて、「Validity and reliability of the“cognitive complaints in bipolar disorder rating assessment”(COBRA) in Japanese bipolar patients」をポスター発表し、第16回精神疾患と認知機能研究会において、「COBRAを用いた双極性障害の認知機能障害に関する検討」を発表した。今後は、双極性障害の主観的認知機能に関する研究を進めるとともに、得られた知見を臨床に生かしていきたいと考えている。

グループでの仕事としては、賀古と豊島が中心となって気分障害の回復活性化統合プログラム(HIRAP)を継続し、今後その有効性を検証していく予定である。また、メンバー全員が精神病理クリニカルカンファレンスの世話人となっており、年間4回の症例検討会を開催し、診療技術の向上や若手医師への教育を図った。

臨床精神病理グループでは今後もさまざまな疾患を対象として精神病理学に神経心理学など多様な視点を加えた臨床研究を行い、症候学や診断学、治療学の向上に寄与できるような成果を上げていきたいと考えている。

(文責:賀古 勇輝)