気分障害グループ

メンバー(平成29年度)

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研究内容(平成28年度)

2016年度気分障害グループは、仲唐安哉先生が中江病院へ転出し、宇土仁木先生が大学院生として帰局しています。また、大学院を優秀な成績で卒業した陳 冲先生が、理化学研究所脳科学総合研究所理論統合脳科学研究チームにポスドクとして就職しています。 研究としては6編の英語論文をこの1年間で発表しており、論文と現在おこなっている研究を中心に報告します。

1. 臨床研究

気分障害における幼児期の虐待、感情気質、成人期ライフイベントの関連

これまで、一般成人においてTEMPS-Aで測定される感情気質が、幼児期の虐待と抑うつ症状の強力なmediator(媒介者)であること(Nakai Y et al, J Affect Disord, 2014)、階層的重回帰分析を用いて感情気質、幼少期ストレス、成人期のライフイベントが抑うつ症状に対して互いに協調するmoderator(仲介者)作用があることを明らかにした(Nakai Y et al, J Affect Disord, 2015)。また、健常者とうつ病患者において、自覚的うつ症状、幼児期の虐待、感情気質、成人期ライフイベントを調査したところ、幼少期の虐待、特にネグレクトが気分循環性感情気質と不安感情気質を介して、間接的に大うつ病性障害を予測すること(Toda H et al, Neuropsychiatr Dis Treat, 2015)、うつ病の重症度を幼少期のネグレクトが間接的に、4つの感情気質と成人期ライフイベントが直接的に強めることを明らかにした(Toda H et al, Psychiatr Res, 2016)。現在、一般成人における気質・パーソナリティ(BIS/BAS)と幼児期の虐待、抑うつとの関連を解析している(亀山)。

TEMPS-A short ver.の妥当性の検証

110項目のTEMPS-Aについてshort ver.の妥当性を検証したところ、39項目のshort ver.の妥当性は示されなかった。しかし、18項目のver.についてモデルの適合度が高く有用性が高いことが示された(Nakato Y et al, Neuropsychiatr Dis Treat, 2016)。

その他、現在進行している臨床研究としては、拡散尖度画像(DKI)を用いた気分障害の病態研究(中川)、双極性うつ病に対するolanzapineとescitalopramの併用療法(亀山、中川)、難治性うつ病患者における報酬予測課題遂行時の腹側線条体の賦活に関する研究(若槻)、気分障害患者における睡眠覚醒リズムの季節変動と精神症状との関連に関する研究(北川)、脳脊髄液サンプルを用いたうつ病バイオマーカーの開発(北川、宇土、中川)、心肺運動負荷検査指標に基づいた個別化運動プログラムによるうつ病改善効果(酒井、中川)、DATSCANを用いたBPSD発症機序研究(宇土、中川)などがあります。

2.基礎研究

Mirtazapineの抗不安効果に関する基礎的検討

正中縫線核にミルタザピンを局所注入すると恐怖条件付け学習において抗不安作用を示し、背側海馬において細胞外セロトニン濃度が上昇する。この現象は5-HT1A拮抗薬であるWAY-100635を事前に投与すると減弱する。これらの結果から正中縫線核—背側海馬5-HT1A受容体の活性化が抗不安作用に関与していることを示した(An Y et al, Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, 2016)。一方、以前に私達は炭酸リチウムの亜慢性投与がミルタザピン全身投与の抗不安効果を増強することを報告したが(An Y et al, Eur J Pharmacol, 2015)、この効果が起きる脳部位を恐怖条件付け文脈学習にて検証し、海馬や扁桃核ではなく、正中縫線核がミルタザピンの標的脳部位であることを今回明らかにした(An Y et al, Eur J Pharmacol, 2016)。

運動療法による抗うつ効果に関する基礎的検討

うつ病治療にとって運動療法が効果的であることは知られているが、メカニズムは明らかではない。本研究ではラットを用いて3週間の自発的な輪回し走行が、強制水泳による無動時間が短縮することを確認し、そのメカニズムとして内側前頭葉のグルココルチコイドードパミンーD2受容体の経路が関与することを明らかにした(Chen C et al, Psychoneuroendocrinology, 2016)。また、グルココルチコイドと神経伝達物質の観点から運動療法について総説した(Chen C et al, Front Neuroendocrinol, 2017)。

その他、現在進行している基礎研究としては、Mirtazapineの作用機序の検討(安)などがあげられる。
臨床としては、入院患者の個別の治療に関して週に1度グループでのカンファレンスを行い、さらにはCANMATなどの治療アルゴリズムや最新の関連文献の抄読などで基本的な知識の習得も行っている。

(文責:亀山 梨絵、中川 伸)