気分障害グループ

メンバー(平成30年度)

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研究内容(平成29年度)

2017年度は、若槻百美先生が転出し、グループリーダーであった中川伸先生が10月に山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学講座の教授に就任しています。また、3月には大学院4年の北川寛先生が大学院を卒業しました。

1. 臨床研究

アクチグラフィを用いた双極性障害患者における概日リズムに関する研究(学位論文、北川)

双極性障害の臨床経過において概日リズム障害を適切に評価することは重要と考えられているが、双極性障害における概日リズム障害を長期的に検討したものは質問紙など主観的評価によるものしかなく、アクチグラフィなど客観的指標を用いた研究は数週程度の短期的なものに留まる。そこで、北海道大学病院精神科神経科または協力病院に通院中の双極性障害ないし大うつ病性障害と診断された患者及び年齢性別を一致させた健常者を対象に、1年にわたりアクチグラフィを用いて概日リズムの評価を行った。その結果、双極性障害患者は健常者と比較して概日リズムの不安定性が強く、概日リズムの位相と関連する活動相の開始時刻が後退していることが客観的指標を用いて確認された。さらに、季節の要因を交えて解析を行った結果、双極性障害患者における概日リズムの不安定性は季節の影響を受けないこと、概日リズムの位相と関連する活動相の開始時刻は冬が秋に比べて後退する(季節変動がある)ことが明らかとなった。双極性障害における概日リズム障害の病態に関しては、光感受性の亢進や時計遺伝子の異常などが指摘されているが、依然として十分には解明されておらず、今後の課題となる。
また、「双極性障害における睡眠障害と概日リズム障害の病態とその治療について」が臨床精神薬理に掲載された。

双極性うつ病に対するolanzapineとescitalopram併用療法の非対照試験(亀山)

多施設でご協力頂いていた研究のエントリーが終了した。MADRS総点が20点以上の双極性うつ病患者13例に対し、olanzapineとescitalopramを1日1回与薬し、安全性と有効性を観察した。MADRS総点、QIDS-SR-J、CGI-BPいずれも8週、24週において有意にスコアの改善が得られた。13例中7例で体重増加や嘔気、食欲亢進などの副作用を認めた。躁転した患者は1例もおらず、寛解率は8週で30.8%、24週で15.4%であった。双極性うつ病患者に対するolanzapineとescitalopramの併用は、うつ症状を改善させる可能性が示された。過去の研究でも、SSRIは気分安定薬や抗精神病薬の併用下では躁転率は高くないことが報告されており、本研究でも同様の結果が得られた。

Alzheimer型認知症のBPSDと脳内Dopamine systemの関連(宇土)

認知症においてアパシーは頻度の高いBPSDである。アパシーの生物学的な基盤として脳内Dopamine systemの機能低下が推測されている。本研究はAlzheimer型認知症患者を対象にDATSCANを施行し、Alzheimer型認知症のアパシーと脳内Dopamine神経の関係を明らかにすることを目的としている。今後随時エントリーや解析を進めていく予定である。

MRIを用いた双極性障害とうつ病の脳体積の差異についての多施設共同研究(成田)

山口大学院医系研究科高次脳機能病態講座の松尾幸治准教授らと共同で、双極性障害および大うつ病性障害患者の頭部MRIを用いた脳体積の差異について検討した多施設共同研究により、双極性障害患者の方が大うつ病性障害患者よりも背外側前頭皮質と前帯状皮質において体積が小さいことを見出した。(Cerebral Cortex 2017)

その他、現在進行している臨床研究として、一般成人における気質・パーソナリティ(BIS/BAS)と幼少期の虐待、抑うつとの関連(亀山)、脳脊髄液サンプルを用いたうつ病バイオマーカーの開発(北川、宇土)などがあります。また、心肺運動負荷検査指標に基づいた個別化運動プログラムによるうつ病改善効果について、大学院修士課程2年の酒井が修士論文を発表しました。

2.基礎研究

Mirtazapineの抗不安効果に関する基礎的検討

正中縫線核にミルタザピンを局所注入すると恐怖条件付け学習において抗不安作用を示し、背側海馬において細胞外セロトニン濃度が上昇する。この現象は5-HT1A拮抗薬であるWAY-100635を事前に投与すると減弱する。これらの結果から正中縫線核―背側海馬5-HT1A受容体の活性化が抗不安作用に関与していることを示した(An Y et al, Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, 2016)。一方、以前に私たちは炭酸リチウムの亜慢性投与がミルタザピン全身投与の抗不安効果を増強することを報告したが(An Y et al, Eur J Pharmacol, 2015)、この効果が起きる脳部位を恐怖条件付け文脈学習にて検証し、海馬や扁桃核ではなく、正中縫線核がミルタザピンの標的部位であることを今回明らかにした(An Y et al, Eur J Pharmacol, 2016)。

運動療法による抗うつ効果に関する基礎的検討

うつ病治療にとって運動療法が効果的であることは知られているが、メカニズムは明らかではない。本研究ではラットを用いて3週間の自発的な輪回し走行によって、強制水泳試験による無働時間が短縮することを確認し、そのメカニズムとして内側前頭前野のグルココルチコイド - ドパミン- D2受容体の経路が関与することを明らかにした(Chen C et al, Psychoneuroendocrinology, 2016)。また、グルココルチコイドと神経伝達物質の観点から運動療法について総説した(Chen C et al, Front Neuroendocrinol, 2017)。

Aripiprazoleの抗うつ効果増強作用に関する基礎的検討

アリピプラゾールは抗うつ薬(SSRI, SNRI)の抗うつ効果を増強することが知られているがそのメカニズムは明らかではない。ラットを用いた脳内微小透析実験にて、アリピプラゾールとセルトラリンを併用するとラットの側坐核における細胞外ドパミン濃度が増加することを発見した(第11回ドパミンパーシャルアゴニスト研究会優秀賞受賞)。現在は、他のSSRI, SNRIでも同様の研究を継続している。尚、本研究の一部は公益法人薬力学研究会の研究助成を受けている。

(文責:北川寛、北市雄士)