統合失調症グループ

メンバー(平成30年度)

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研究内容(平成29年度)

平成29年度は成田、大久保、古賀が異動した。しかし、残ったメンバーに関しては昨年度以上に臨床に、研究に力を入れた1年であった。まず伊藤であるが、臨床では引き続き病棟医長の重責を担った。その忙しい合間を縫って、実験研究も地道に続け、北大精神科で伝統的に行われている統合失調症の精神刺激薬モデル研究を発展させた。H29年度は免疫・炎症因子異常とグリア細胞、特にマイクログリアの過活性に焦点を当てて、実験的検討を行った。主にラットやマウスの血清採取と同時に抜脳して、前頭前野や海馬、線条体などにおける免疫・炎症因子の蛋白測定や抗体を用いたマイクログリアの形態変化・活性化蛋白の測定を行い、学会発表も行った。ようやくある程度データが蓄積し、英語論文の準備段階まできたが、あくまでも最終目標は、統合失調症患者の血液から脳内の免疫・炎症因子異常を推測し、末梢血液データを指標として脳内の治療を行うという、これまでにない全く新しい概念・治療法の発見であり、この最終ゴールを常に視野に入れつつ、昨年度から加入した岡松彦と実験助手の外崎真理子とともに統合失調症の本質を探るべく、熱い研究生活を送った。

また本年度に大学院院生として新たに帰局した岡であるが、昨年度に引き続き、伊藤の指導の下で精神刺激薬モデルラットを用いた研究に従事した。過去の当教室の研究結果から、統合失調症の病態進行の背景にドパミン神経系の機能亢進からNMDA受容体機能異常が存在すると仮定し、同動物モデルにおけるNMDA受容体の異常を分子生物学的手法を用いて、直接的に検討する事を課題として精力的に実験検討を行った。

橋本は国内の画像・遺伝子研究の他施設共同研究のためのネットワークCOCORO (Cognitive Genetic Collaborative Research Organization) の大規模脳画像データから「抗精神病薬が大脳皮質下領域の体積に与える影響」に関する研究について、データを取りまとめて論文化した。また、これと関連して国内の多施設共同研究「統合失調症の補助診断基準作成」のためのデータ収集を継続しながら、新たに感情障害圏の患者を対象とした「炭酸リチウムの大脳皮質下領域の体積に与える影響」に関する研究にも着手した。一方、学内では「抗精神病薬が報酬予測課題時の基底核の賦活に与える影響」に関して論文化し、さらに科研費研究である新規陰性症状評価尺度の日本語版作成についても精力的に進め、原著者から承認を得ることができた。その後、信頼性と妥当性の評価に入り、完成する日も近い。

H29年度大学院生として帰局した高信は、臨床病理グループの三井より指導をうけながら自殺研究を開始した。中でも本グループで担当した症例を元に「高所転落のために多発外傷を受傷した統合失調症症例の検討」を北海道精神神経学会第132回例会で発表し、高い評価を受けた。

豊巻は脳波研究、認知リハビリテーションの実践と新規介入についての検討を行った。特に脳波研究においては、海外で報告された統合失調症患者をbiotypeという脳波と事象関連電位の異常なパターンで層別化できるという先行研究を参考にして、これまで当研究室で収集したデータを解析した。認知リハビリテーション研究では、他病院に出張し、コンピューターを用いた認知リハビリテーションの普及や、これらの効果をさらに高めるために発散的思考訓練や聴知覚訓練についてのプログラム確立に邁進した。

最後に、長年グループを牽引されている久住教授は、平成24年度から開始された臨床研究中核病院事業(厚労科学研究費)「統合失調症ならびに双極性障害患者における糖脂質代謝障害と抗精神病薬使用時の代謝能変化に関する研究(matSaB研究)」のデータを取りまとめ、論文投稿の準備をすすめる傍ら、多くの学会、講演会などで報告し、この領域の啓蒙に寄与した。

(文責:伊藤侯輝)