統合失調症グループ

メンバー(令和2年度)

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研究内容(平成31年・令和元年度)

まず伊藤であるが、本年も統合失調症の精神刺激薬モデル研究を継続した。前年、免疫・炎症因子異常とマイクログリア過活性に焦点を当て、ラットやマウスの末梢血液と脳(前頭前野や海馬など)における免疫・炎症因子の変動を確認した。その結果、残念ながら末梢と中枢でパラレルに変動する因子はみつからなかったが、モデル全体を通して末梢血液においてIL-10やIL-4が高値であったことから、これらの因子が末梢血液で高値のうちは内側前頭前においてIL-6やIL-1β、TNFαなどの促進性免疫・炎症因子が高値となっている可能性を指摘し、学会で報告した。現在の精神科臨床において、侵襲性の高い検査ではなく、ごく一般的に行われる採血から脳内免疫・炎症因子異常を推測し治療すること、を目標に末梢—中枢の関連に関する研究を続けた。また修士の学生として松本理沙が加入しiNOSなど他の因子の変動も確認中であり、実験助手の外崎真理子には、いつも助けられながらも熱い研究を行った。

橋本は、科研費研究である新規陰性症状評価尺度の日本語版について信頼性、妥当性を評価する研究をおえ、結果を論文にまとめ報告した。また、同時に日本語版PANSSの半構造化面接(Structured Clinical Interview of PANSS:SCI-PANSS)と情報提供者用用紙(Informed Questionnaire of PANSS:IQPANSS)を使用した際の信頼性、妥当性の評価を行い、結果を論文にまとめ投稿した(査読中)。また留学中に取り組んでいた、母親の小脳体積と子供の非定型性の関係に関する研究について結果を論文にまとめ投稿した(査読中)。現在は、統合失調症の陰性症状を評価する行動課題と、簡易陰性症状評価尺度での評価、MRIによる脳の構造的、機能的評価のそれぞれがどのように関係するかについての臨床研究に着手し、データを集積しているところである。

次に岡であるが、伊藤、古賀(退職)、実験助手の外崎らと取り組んできた覚醒剤モデルラットを用いた病態研究を学位(医学博士)論文としてまとめた。過去の当教室の研究で、覚醒剤モデルラットにおいてドパミン神経系の機能亢進からNMDA受容体の機能異常へと病態が進行する可能性が示されていたが、メタンフェタミンの反復投与により成立する異常行動等から間接的にNMDA受容体の機能異常を推測するのみであった。この研究で、NMDA受容体機能異常の本態の一部がNMDA受容体の必須サブユニットであるGluN1タンパクの産生・発現量の低下にあり、この異常はハロペリドールの投与では改善せず、アセナピンの投与で部分的に改善する可能性があるという結果を得た。古くからある統合失調症のモデルだが、ドパミン仮説のみに基づくものではなく、NMDA受容体に関連した病態の一部をも反映している可能性を直接的に示し、その価値が見直されるべきモデルである事を示した。

大学院3年目の高信は、臨床では統合失調症グループに所属して診療に携わりつつ、統合失調症の臨床、自殺予防、司法に関する研究を並行して行った。精神病理グループと協力し、本学の大学生を対象に入学時のTemperament and Character Inventory (TCI)によって評価された気質-性格特性と3年後のうつ病エピソードおよび自傷・自殺念慮の発生との関連について検討した内容の論文を執筆中である。また平成31年4月の第14回日本統合失調症学会(札幌)でクロザピン導入に関する症例報告のポスター発表、令和元年6月の第15回日本司法精神医学会大会(花巻)で北海道の触法精神障害者医療に関する口演、9月の第43回日本自殺予防学会(名古屋)では当科入院時に施行している自殺リスクアセスメントシートに関する後向き調査に関する口演、第136回北海道精神神経学会例会(札幌)でブレクスピプラゾール開始前後の血中プロラクチン値の変化に関して検討した口演を行うなど、精力的に研究成果を社会に発信した。

最後に豊巻だが、これまで統合失調症患者を対象に脳波、認知機能検査の計測、認知機能リハビリテーション(NEAR)を実践してきた。今年度は、新規に聴知覚訓練の日本語版の導入に従事した。また昨年に引き続いて、新規の認知機能改善療法としてミネソタ大学のVinogradovが報告している聴知覚訓練の日本人患者に関する検討も行い、現在、倫理委員会に計画書を申請しているところである。さらに我々のグループの橋本と共に統合失調症の陰性症状に関する新規評価尺度(BNSS)を用いた包括的な研究に関しても、症例を増やしているところである。

(文責:伊藤侯輝)