統合失調症グループ

メンバー(平成29年度)

※画像をクリックすると各スタッフの紹介ページにジャンプします。


研究内容(平成28年度)

平成28年度は、久住教授を筆頭に、助教3名、特任助教2名、大学院生2名という強力布陣で臨んだ1年間であり、臨床、研究とも非常に多彩かつ、充実した内容活動を行った1年であった。

まず伊藤は病棟医長の重責を担うかたわら、科研費を獲得し、北大精神科の伝統である統合失調症の精神刺激薬モデル研究を新たな視点から発展させている。近年は統合失調症と免疫・炎症因子異常とグリア細胞、特にマイクログリアの過活性に焦点を当て、本年は特にラットやマウスの末梢血液から血清を作り、同時に抜脳して前頭前野や海馬などにおける免疫・炎症因子の蛋白測定を行った。着々と結果が出てきており、報告の準備段階に入ったところである。最終目標は、統合失調症患者の血液から脳内の免疫・炎症因子異常を推測し、末梢血液を指標として脳内の治療を行うという、これまでにない全く新しい概念・治療法の発見である。

また本年度に大学院院生として新たに帰局した岡であるが、伊藤の指導の下、精神刺激薬モデル研究系において、NMDA受容体の機能低下をより直接的に検討する事を目的として、古賀特任助教、実験助手の加藤(平成29年1月退職)、外崎両名の協力を得ながら実験系を立ち上げつつある。また、昨年承認された新規抗精神病薬asenapineが、本実験系においてNMDA受容体の機能低下を阻止し得るかも検討する予定となっている。

橋本は、留学前から取り組んでいた「報酬予測課題遂行時の統合失調症患者の報酬系関連脳部位の賦活」、留学先で行っていた「親の脳構造が子の非定型性に与える影響」の論文作成に取り組む傍ら、国内の画像、遺伝子研究の他施設共同研究のためのネットワークCOCORO(Cognitive Genetic Collaborative Research Organization )の大規模脳画像データから、「抗精神病薬が大脳皮質下領域の体積に与える影響」に関する研究についてもデータ取りまとめを行った。また、新規陰性症状評価尺度の日本語版作成にも着手している。

昨年度大学院を卒業し、本年度より助教となった成田は、基礎論文とした『統合失調症における拡散尖度画像の有用性について』の報告が、Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatryにアクセプトされ、その結果を日本生物学的精神医学会総会にて報告した。さらに山口大学を中心とした多施設共同研究での、気分障害患者におけるMRI構造画像についての研究を現在進めている。また、総合病院精神医学会臓器移植関連委員会ワーキンググループの一員として、心臓移植における精神医学的問題について日本精神神経学会総会で報告し、精神科治療学に総説を投稿(in press)、心不全に伴う精神症状について、緩和ケアに総説を投稿した(in press)。この他に名古屋大学を中心とした肝臓移植におけるドナーおよびレシピエントの精神医学的問題関する多施設共同研究にも参加している。

大学院の最終年を迎えた大久保は、統合失調症患者の幼少期ストレスと抑うつ症状の関係について、人格傾向の媒介効果を検討した研究を行った。知見を17th Pacific Rim College of Psychiatrists Scientific Meetingで発表し、論文投稿中である。診療ではクロザピン開始後17年経過して発症した拡張型心筋症について、精神神経学雑誌に症例報告を行い、クロザピンの心筋症に対するモニタリングについて広く注意を喚起するとともに、当院の「こころのリスク検査入院」について、本年創刊された予防精神医学誌に北海道地域での取り組みについて寄稿した。その他、教育面では認知行動療法のスーパーバイザーとしての経験を認知療法研究誌に寄稿するなど、幅広い活動を行っている。

豊巻特任助教は脳波研究、認知リハビリテーションの実践と新規介入についての検討を行った。脳波研究では、Clementz(2016)らの統合失調症患者を事象関連電位の異常なパターンで層別化したという研究を元に、これまで当研究室で収集したデータを解析しているところである。認知リハビリテーション研究では、NEARの実践に加えて、桑園病院にてVCATJ(帝京大池淵先生が翻訳したJ-CORESソフトを用いた認知リハビリテーション)を実施した。さらに効果を高めるために発散的思考訓練や聴知覚訓練についてプログラムを確立する研究計画を検討しているところである。

古賀特任助教は、久住教授が研究代表者を務める異分野融合共同研究「医学・栄養学との連携による日本食の評価:日本食によるストレス・脳機能改善効果の解明」を進めた。このプロジェクトでは大きく2つの研究が行われた。一つは質問紙を用いた疫学的な方法により、一般成人を対象として食習慣ならびに抑うつ状態や心理状態を調べ、統計学的に食と精神的健康との関連を明らかにした。この結果はPLOS ONEに投稿し、現段階はMinor revisionにて再投稿中である。もう一つの研究は、日本食における代表的な「米」に着目し、介入試験による脳機能改善効果の検討である。睡眠の質や、抑うつ状態、心理状態などの分析に加え、生化学的な知見を得るためにメタボローム解析を行った。この研究結果については論文準備中ある。また、科研費(若手B)他、いくつかの研究助成が採択となったのでそれらの研究を開始した。

長年グループを牽引されている久住教授は、平成24年度から開始した臨床研究中核病院事業(厚労科学研究費)「統合失調症ならびに双極性障害患者における糖脂質代謝障害と抗精神病薬使用時の代謝能変化に関する研究(matSaB研究)」について、日本全国44医療機関の協力の下に平成28年3月末でデータ収集を完了し、様々な角度からの統計解析を進めた。本研究に関しては、近々に第1報の投稿を行う予定である。

(文責:橋本 直樹)